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雅の思惑
三人でショッピングモールの中にある店を適当に見て回る。
この服は最近の流行りだとか、小物の種類が多いだとか、本当に他愛もないことを言い合いながら。
それでも、ムードメーカーな雅のおかげでいつもと変わらないくらいに睦月と話が出来た。
こういうときの雅は本当に俺が尊敬するほど話し上手で、盛り上げ上手だから助かる。
沈黙で場が固まらないように、どんどん話をこちらに回してきて、それに乗るたびに他の話と絡めていく。
いつもよりもお喋りに感じるのは雅なりに気を遣ってくれているのかもしれない。
その後、モール内にちょうど期間限定で店を出していた焼き芋屋があったので、それぞれ一つずつ購入した。
手近にあったカフェテーブルの椅子に座ると三人で時々喋りながら熱々の焼き芋を頬張る。
「甘いのって普段あんま食べないけど、たまに食べると上手いよなー」
「わかったから口拭け。後、食いながら喋るな」
焼き芋を頬張りながら、口端に食べかすをつけて喋る雅にポケットティッシュを差し出す。
「この後どうするか。そろそろ帰るか?」
「あー、待ってくれ。俺、買いたい新刊あるから本屋行ってくれると助かる!」
慌てた様子でそういう雅だったが、俺の視線に気づくとにんまりとドヤ顔をしてぐっと親指を立ててきた。
(おい、待て。まさか……)
「ということで、ほら! 睦月もそろそろ本屋行くぞ!」
雅が底抜けに明るい声で睦月に話しかけてから、ちょいちょいと手招きして焼き芋のゴミを回収する。
それをゴミ箱に捨てると悠々とした足取りで歩き出した。
雅の思惑など露ほども知らない睦月がチラリとこちらを見てからその後に続く。
「はぁーっ……」
俺は大きくため息をつくと、同じく雅が捨てたゴミ箱に焼き芋を包んでいた袋を投げ入れて渋々、二人の後を追うのだった。
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