45 / 166

青い鳥 2

 確かストーリーは、クリスマスの前夜に魔法使いのおばあさんに病気の娘のために幸せの青い鳥を探してきてほしいと頼まれるって始まり方だった気がする。  鳥籠を持って出かけた兄のチルチルと、妹のミチルは妖精に導かれながら夢の国の中で青い鳥を探すけれど、色が変わったり死んでしまったりして捕まえられないままで。  母親の声で目を覚ました二人は部屋の鳥かごの中で青い鳥を見つける、というストーリー。  本当の青い鳥(しあわせ)は手の届く身近なところにあるのだという深い話を書いた作品だった気がする。 「おー? なに? お前ら、そういうの好きなのかー?」  頭の中であらすじを思い出していたところに、後ろから雅の声が聞こえて振り返った。 「参考書、見つかったのか?」 「あったあった。つか、参考書見つけてた時に親からメール来て帰ってこいって言われたから、俺は先帰るなー」 「はぁ?! ちょっ……」  右手に持っていたスマートフォンを軽く振ってそう言う雅は、俺の静止の声など全く耳を貸さずに嵐のように走って行ってしまう。  そんな雅を止める間も与えられず唖然と立ち尽くす俺と睦月は、暫くして顔を見合わせると肩を竦めた。 「なんなんだ、あいつは……。竜巻かよ……」  気を利かせてくれたのだろうが、もっとスマートに気を使えないのだろうか。 「……えーと、それ、買ってくか?」 「ぁ……」  睦月は俺と本を交互に見て逡巡したあと、小さく頷いた。  それを見届けてから俺はひょいっと睦月の手から本を奪い取って会計へ向かう。

ともだちにシェアしよう!