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睦月からの誘い 2

 ……なんなんだ。  なんで、そんな言葉をそんな|表情《かお》して言うんだよ。  好きな人から一緒に過ごしたいなんて言われたら、勘違いしてしまいそうになるじゃないか……。  そうじゃないとわかってても睦月の言葉の一つ一つがたまらなく、嬉しい。  寒いはずの外の風も、温度も。  気にならないくらいに体中が温かくなっていく。  正確には俺の体温が勝手に上がっているだけなのだろうけど。 「ユキさえ良かったら。クリスマス、俺と一緒に、過ごして下さい」 「……むしろ、こんな俺で……良かったら……」 「ううん。ユキが、いい。ユキと、過ごしたいから。お願いします」 「……っ」  ヤバい……。  俺、こんな涙脆かったっけ。  溢れそうになる気持ちを必死に抑えて小さく鼻を啜った。 「今年はいいクリスマスになるといいな」 「うん」  嬉しそうにぱっと顔を輝かせる睦月に微笑み返してから、改めて広場のツリーに目を向けた。 キラキラと輝く光が、風にふわりと揺れる。  瞳に映る優しい明かりにふっと目を細めて空へ息を吐き出した。 (早く、クリスマスにならないかな)  先ほど約束したばかりなのに、今から楽しみで楽しみで、仕方なかった。  睦月とクリスマスを過ごすのは初めてってわけじゃなくても、大事な一日を“一緒に過ごしたい”と言ってくれるだけで嬉しい。  いい一日に出来るといいな。

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