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君のおにぎり
翌日の朝は昨夜、眠るのが遅かったにしては早く目が覚めた。
まだ外は暗く、宮棚にある時計を見ると時刻は早朝の五時。
「…変な時間に起きた」
布団から這い出て一階へ降りると真っ暗な居間の電気を付ける。
「……睦月がいないと、この家、ホント静かだな」
といっても別に睦月がうるさいわけではない。
むしろ、あまり喋らないから静かな方なのだけど、俺からしたら存在自体が光みたいにキラキラしているので、やけに部屋全体に静寂を感じるのだ。
(こういうのを空気が静かって言うんだろうか)
食器棚からいつも使っている愛用のコップを取り出し、冷蔵庫の扉を開ける。
「あれ?」
中に見覚えのないタッパーが入っていた。
目立つように真ん中に鎮座していて、それを手に取って蓋を開けてみると、中にはキレイな三角形を成すおにぎりが二つ。
大きな海苔がご飯を包んでいる。
(こんなの作ったか?)
俺が作ったわけじゃないとなるとこの家に出入りしているのは睦月しかいない。
ただ、今日は一度も睦月がおにぎりを作っている姿なんて見た覚えがなかった。
「あ、そういえば……」
パーティーの準備の時に、一度だけ自分の家に戻ってお風呂に入ってくると出て行ったことを思い出す。
もしかしたら、その時に作ってきたのかもしれない。
飲み物などを注いでくれていたのは睦月だったから冷蔵庫に入れることも出来るだろう。
(でも、なんで?)
なんでいきなりおにぎりなんか作ったんだ?
しかも、冷蔵庫にあるってことを俺に教えてくれた記憶はない。
いつ食べるつもりで作ったものなのか。
意図が分からず首を捻った時に、タッパーの後ろに紙の感触がして、俺は慌てて下を覗き込んだ。
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