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理由
「それより、朝ごはんはいつも俺が用意するのに、なんでわざわざおにぎりなんて作ったんだ? それに、手紙も……」
「……その」
言いづらそうに俯いて眉を下げる睦月を黙って見守る。
「あの……いつも、お世話になってるから、何かお礼したくて。でも、直接言うの、恥ずかしくて……」
「そっか」
頬を染めながら肩を強張らせる睦月に、俺は優しく一言そう返事をした。
「ただ、夜はご飯、食べたし……夜食は、だめかなって。俺、簡単なものしか、作れないから、お弁当、ハードル高い……」
確かに朝も昼も夜もいつも俺が用意してる。
料理をするのが好きというのはあるが、睦月が自分の作ったものを美味しそうに食べてくれるのが嬉しいという気持ちが大きい。
「それで、朝ごはんに……。でも、そうだよね。朝も、ユキがご飯、用意してくれるから、いらなかったよね」
「そ、そんなことないぞ! むしろありがとう。おかげで美味しいおにぎり食べられた」
「ううん。俺の方が、ありがとう。でも、今度からはもう少し、わかりやすく、書くね」
申し訳なさそうに眉を下げたまま笑みを零すと頭を下げた。
睦月は、たまにこういう不器用なところがある。
その割にはこうして突発的に行動を起こしたりするのだ。
俺ももう少し汲み取ってやれればいいのだが、なかなか難しい。
ここはちょっとずつ理解していければいいなと思った。
「あ、ご飯、食べなきゃ」
ようやく朝の件についての話が一段落ついて、睦月が朝食に目を向けた。
「そうだな。んじゃ、改めていただきます」
そういえば、箸が止まったままだ。
今日でやっと学校も一旦終了なのだから、終業式くらい遅刻せずに登校しないと。
俺達は残りの朝食を早々食べ終えて、急いで片付けを済ませる。
そのあとは時間に余裕もなかったため、いつもよりバタバタしながら二人で学校へ走る羽目になった。
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