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雅の変化
家を出たあと、いつもより少し早足で学校へ向かうと、校門の前で雅が俺と睦月にブンブンと手を振っていた。
「おはよう、雅。こんなとこでなにやってんだ?」
近づいて声をかけたら、雅がにっと笑って俺の首に腕を回してきた。
「おはよ、ユキ、睦月。さみーなぁ! 二人と一緒に教室行きたくてここで三十分も待ってたんだぜ」
「お前アホだろ。教室でどうせ顔合わせるんだし、先に行ってればよかったのに」
「そう冷たいこと言うなよ〜! あ、そうそう、それと」
雅は俺から離れるとガサゴソとカバンの中を漁って、何かを取り出す。
「これ、家の母さんから預かってきたんだよ。二人に渡してくれって」
雅の手には千円の商品券が握られていた。
五枚綴りのもので、額的にも結構大きい。
「え? なんでっ?」
「いや、クリスマスパーティーのこと話したら、流石に料理代は負担させてほしい〜ってことで、持ってけって念押しされちゃってさ」
「いやいや! 流石にこんなの悪いって!」
そこまで盛大にやるわけでもないし、作っても軽くビーフシチューとかピザとかローストビーフを用意しようと思っていたくらいだ。
一応、ケーキもお店で頼んではいるが、そこまで高いものじゃない。
「まぁまぁ。とりあえず、貰っておいてくれると助かる」
「……わかった。えっと、ありがとうございますって言ってたって伝えといてくれ」
「おう」
なんだか、気を使わせてしまっただろうか。
雅のお母さんとは何度か雅の家に遊びに行ったときに会ったくらいで、そこまで話した記憶がない。
会うたびに挨拶などはしているので別に仲が悪いというわけでもないが。
とりあえず、貰った商品券を鞄の中にしまって三人で教室まで向かう。
(そういえば……)
雅はこれを渡すためにわざわざ外で待っていたのだろうか。
変わったやつだなという気もするが、教室でも渡せるものなのに、なんでわざわざ?
前を歩く雅の背中を見つめながら頭を捻るが、全く理由がわからなかった。
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