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クリスマス・イヴ
朝のホームルームのあと、だらだらと長い校長からの呪文のような講話と諸連絡だけの終業式を終えて、教室に戻る。
そのあとは、教室の方で担任からの連絡事項や注意事項の話があり、それを適当に聞き流しながら窓の外を眺めていた。
「……」
灰色の雲が空を覆っていて、いつ雪が降ってもおかしくなさそうな感じだ。
もし降ったら、ホワイトクリスマスになるな、なんて考えながら誰もいない校庭に視線を向けた。
「ユーキっ!」
ぼーっと窓の外を眺めて考え事に耽っている間にホームルームが終わったのか、帰り支度を早々に済ませた雅が後ろから抱きついてきた。
「わっと……! 重いぞ……」
「いつまでぼーっとしてんだよ! 帰ろーぜ!」
今日は午前中のみなので、早く帰宅出来る。
部活動なども殆どのところは休みで、大体の生徒はこのまま帰宅するか何処かに寄り道して帰るかだろう。
クラスメイトの数人は教室でまだ駄弁っていて、このあとカラオケに行くか行かないかの話で盛り上がっていた。
「わかったわかった。とりあえず離れろ」
「えー、いいじゃんかー! な、睦月ー?」
そこでようやく睦月の存在を思い出して、はっと顔を向けると、無表情で俺と雅を見つめる睦月の姿があった。
心なしか視線が冷たい気がする……。
「む、睦月……っ! えっと、すぐ準備するからちょっと待っててくれっ」
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