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冗談?
三人が話している間、俺と睦月は手持ち無沙汰になる。
というか、帰るんじゃなかったのか。
俺の後ろに隠れるように位置を移動する睦月を一瞥してから、小さくため息をついた。
正直、守屋と新田は苦手なんだよな。
雅以上に陽キャラだし、何となく俺に対していい印象を持っていないような感じに見える。
「雅さー、最近、付き合い悪いよなぁ。霜月とばっかいるし。たまには俺らとも付き合いあってもいいんじゃねーかなぁと」
「悪い。また埋め合わせするから――」
「もしかしてさー、雅のあの噂、本当なのか?」
「え? 噂?」
不思議そうに首を傾げる雅とは対象的に、俺はピクリと片眉を動かして眉をひそめる。
チラチラとこちらに視線を向けて、口元を歪めて笑う二人に。
何か、嫌な予感がした。
「ほら、雅って霜月のこと好きなんじゃねーのかって、噂」
「…………っ」
「…………え?」
守屋が放った言葉に俺は瞬きを繰り返した。
今こいつ、なんて言った?
雅が……俺を、好き?
「い、いや、そりゃダチだし、好きだけど……」
「そーじゃなくてさぁ。恋愛的な話のことだよ」
「…………」
雅が否定も肯定もしないまま固まる。
その場がまるで、凍りついたようにシンと静まり返り、吐き出す時に出る白息だけが、時間が動いている事を教えていた。
「なーんてな。冗談だって! そもそも、霜月は同性だし有り得ねぇって一応、噂してたやつに怒っといたから。大丈夫だって!」
守屋が場の空気を和ますように明るく笑って雅の肩を叩く。
「まぁ、霜月と仲いいなとは思うが、流石にそれはないだろって常識でわかるしな」
守屋のあとに続くように新田がそう口にして、ようやく雅が顔を上げた。
「そ、そうだぞー! 雪は男じゃねーかっ! あるかよ〜!」
「…………」
いつものように笑って守屋の頭を叩く雅を見つめながら。
視界に映るその顔が引きつっていることに、俺は、動揺を隠せなかった。
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