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雅との距離 2
ミトンを手につけて鍋を持っていくと、睦月が俺に気づいてぱっと笑顔を咲かせる。
「ユキ、おつかれ」
「ありがとう、睦月。んじゃ、そろそろ始めるか」
テーブルに敷かれた鍋敷きの上にビーフシチューを置いてからいつもの席に座る。
俺の前には睦月がいて、隣には雅がいた。
仕方ないとはいえ、なんで隣に座るのかと何となく居心地が悪くなってしまう。
睦月の隣に座らせると、触れてしまうと大変なので俺の隣になってしまったのだが、今日ばかりはこの状況を心底恨んでしまった。
「コーラ、コップに入れておいたぞ」
「あ、あぁ、ありがとう。えっとそれじゃあ、乾杯」
「かんぱい」
「乾杯〜!」
三人でグラスを高く上げて乾杯する。
真っ先に雅がゴクゴクと喉を鳴らしながら豪快に一気飲みしていて、正直、よくそんなふうに飲めるなと関心してしまった。
「んー! やっぱコーラが一番だよな〜」
「わかったかわった。ほら、雅の分」
俺は持ってきていたシチュー皿にビーフシチューをよそって雅の前に差し出す。
それを大喜びで受け取る姿に、思わず笑みが零れてしまった。
「なんだよー」
「いや、今日の雅はテンション高いなって思って。いつも無駄に高い気はするけどな」
「それ、褒めてねーだろ」
「褒めてる褒めてる」
絡んでくる雅を適当にあしらって睦月の分もよそってから、お皿を机の上においてやる。
「ありがと」
「うん。火傷しないようにな」
「気をつける」
優しく睦月に笑いかけると、睦月の方も同じくふわりと顔を綻ばせてくれる。
その笑顔に胸の奥が高鳴るのを感じながら、バレないようにさっさと視線をそらして座り直した。
「…………」
「ん? なんだよ?」
俺と睦月のやり取りを雅がじっと見つめてきていて、思わず肩に力が入った。
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