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それでも……。
「…………そっか」
長い沈黙のあとに返ってきた言葉が震えているのが嫌というほど伝わってきた。
こんな誰もいない静かな公園なら、なおさら雅の声がはっきり聞こえてしまうから。
「……俺も、ごめん」
雅の謝罪に、俺は力なく頭を振った。
違う……。
悪いのは雅じゃなくて、雅の気持ちを受け取れない俺なのに。
触れられない睦月よりもずっと、雅は恋人らしくいられる相手なのに。
それでも――
触れられなくても。
愛しあえなくても。
睦月のことが好きだから。
雅の気持ちを受け取ってやれない。
「……今日のことは、忘れてくれると、助かる……」
「……っ」
「ユキさえ良かったら、これからも友達として……一緒に、いさせてほしい……」
雅の涙を含んだ声にそう言われて、俺はただ頷くことしかできなかった。
「……ごめん、ここまででいい」
「……っ、雅……っ」
雅の絞り出すような声に咄嗟に顔を上げてブランコから立ち上がる。
俺に背を向けた雅の表情は見えなくて。
それでも、その背中が震えているのがわかった。
「……ごめん、ユキ。悪いけど……一人にさせてくれると、嬉しい……、……っ」
「…………わかった。……じゃあ、また、連絡する……」
どんな言葉をかけたところで、雅を傷つけることしか出来ない。
それなら、今は俺が構うのは間違っているはずだから。
そのまま背を向けて公園の入り口へ歩き出す。
「……っ、ふ……、ぅ……っ」
背中に届く声に立ち止まりそうになりながら、それでも俺は、そのまま雅を置いて家への道を歩き出した。
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