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迷う心
十二月二十五日。
クリスマス当日の空模様は暗澹とした曇り空だった。
窓から見える灰色の雪雲に俺の心まで陰鬱になっていく気がして、窓から離れて朝食の準備をする。
今朝、睦月からメッセージアプリで連絡があり、今日は朝食はいらないと一言だけを送られてきていた。
届いた時間を確認すると早朝の四時で、ちゃんと眠れているのか少し心配になる。
一応、大丈夫かということと、お腹空いたらメールしてほしいという事をメッセージで送ったが、連絡は返ってきていない。
即読はしているのでひとまず無言の了解と受け取って一人分の朝食を用意した。
一人で食べる朝食は久しぶりで。
とても味気なかったが、無理矢理腹に詰め込むことに専念した。
朝食を終えて、洗濯物を片付けても、外に出たいという気にもならず、いつもより長く感じる時間をベッドに寝転びながらただぼんやりと過ごした。
今、睦月は何をしているのだろうか。
外に出て散歩でもしているのか。
それとも、家の中で一人でいるのか。
電話でもかけたら分かるのだろうが、そんな気力も沸かず、布団の中に包 まる。
……俺は、どうしたいのだろう。
睦月と、どうなりたいのだろう。
世間一般で同性を思う気持ちが認められるなんて最初から思っていない。
触れられなくても好きな気持ちは変わらない。
そう思っているのに、まだ迷いがあって。
ただでさえ、睦月にとって生きづらい世の中で。
加えて、過去に実の父親に売春をやらされ性的暴力や受けていたこともあり、男性に対する恐怖は人一倍あるはずで。
それを考えたら、俺なんかが睦月を好きになるべきじゃない、睦月にはきっと異性の人の方がいい、と思考が暗い方へ転がり落ちていくのだ。
だけど、睦月の言った「そばにいたい」という言葉に期待してしまう自分がいる。
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