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聖夜の約束
結局俺も、自分のことばかりなのだろう。
そう考えただけで気持ちがどんどん落ちていく。
そんな時に耳に何かの振動する音が届いた。
「……?」
布団から這い出ると枕元に置いていたスマホを手に取る。
てっきり睦月からかと思ったが、メッセージの相手は雅からだった。
七森雅という文字を見ただけで、ズキリと心臓に痛みがさす。
昨日の今日で、雅から連絡があるなんて思っていなかったので、恐る恐るアプリを開いてみると届いていた内容は至って平凡なものだった。
『今、守谷達と会って、これから隣街行ってくるわー
そういえば、モール前のツリーめっちゃキレイに飾り付けされてんな。
暇あったら見に行ってみろよ〜』
そんな軽い調子の文章に俺は小さく笑みが零れた。
雅なりに普通でいてくれようとしてくれていて、その優しさに思わず胸の奥が熱くなる。
「モール前のツリーか……」
そういえば、今年は飾り付けが凄かった気がする。
そこまで考えて、俺ははっと息を呑んだ。
クリスマス用の飾りを買いに行った帰りに、睦月と交わした約束。
『ユキさえ良かったら。クリスマス、俺と、過ごして下さい』
そう言った睦月の微笑みを、言葉を、何故俺は忘れていたのだろうか。
自分のことでいっぱいいっぱいでそんな大事な約束にすら気が回っていなかった。
「……行かなきゃ」
陰鬱としていた気持ちを振り切って、鞄に必要なものを詰め込む。
そのままクローゼットを開けて、コートとマフラーをひったくると、階段を駆け下りた。
きっと睦月は今も、待ってくれているのではないか。
確かにどちらから迎えに行くという話はしなかったが、睦月なら昨日の俺の様子を気遣って誘いに来ないなんてことは普通にあり得る話だった。
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