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君を誘いに
玄関でもたつきながら靴を履き替えて、ドアを勢いよく開く。
外の冷たい空気が体を襲い、まだマフラーを巻き終えていない首元を北風が無遠慮に撫でていく。
でも今は早く睦月に会いたくて、顔を見たくて。
鍵をかけて門扉を抜けると隣の家へ向かい、門柱に取り付けられているインターホンを押した。
「………」
少し乱れた息を整えながら応答を待つ。
その間が何十分にも感じられて、息が詰まりそうだった。
焦りを覚えてもう一度インターホンに手を伸ばそうとした矢先。
インターホンから声――ではなく、家の玄関がゆっくり開いた。
「ユキ……?」
「……おはよう」
開いたドアから睦月が顔を出して不思議そうな表情で俺の名前を呼ぶ。
いつもの癖で挨拶をするが、時刻的にはもうこんにちはの時間だった。
「どうしたの……?」
困惑した様子の睦月に、もしかして覚えてないのかと俺まで戸惑ってしまって言い出そうか迷ってしまう。
もし覚えていなかったら悲しい上に、どう誘ったらいいかわからない。
(それでも……)
きっと今を逃したら、もう二度と素直になんてなれない。
覚えていなくてもいい。砕けてもいい。
その覚悟で俺は真っ直ぐ睦月を見返すと口を開いた。
「……良かったら今日、一緒にモール前のツリー見に行かないか?」
「…………」
困惑していた睦月の琥珀色の瞳が大きく見開かれた。
そのままくしゃりと顔を歪ませるとその場に蹲ってしまう。
「お、おい! 睦月?!」
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