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海に行きたい
睦月が出掛ける準備をしている間、俺は一人、外にいた。
家の中に上がってくれていいと言われたのだが、緊張してしまってとてもじゃないが家に上がることが出来ずに寒い外で待つ羽目に。
(俺、めっちゃカッコ悪い……)
緊張して家に入れないとかなんだよ……。
睦月にはどうせだから外で待ってると伝えたが、絶対怪しまれてるぞ……。
門柱に背中を預けながらどこに行こうかと頭を巡らせる。
クリスマス当日できっと店はどこも人で溢れかえっているだろうことが安易に想像出来る。
睦月がストレスを感じないで楽しめる場所が全く思いつかず、ガリガリと頭を掻いた。
「ユキ、お待たせ」
ガチャリと扉の開く音がしてそちらに目を向けると青色のクルーネックのニットにチェック柄の灰色のボトムス、上から灰緑色のモッズコートという暖かそうな格好の睦月が立っていた。
背中に少し大きめのリュックを背負っているが、マフラーはしていない。
「首元、寒くないか?」
「うん、大丈夫。それより俺、ユキと行きたいとこ、ある」
さも平然と胸を張る睦月は続けざまにそう言って、後ろ手に隠していたのか、一冊の雑誌を差し出してきた。
表紙に大々的に載っているのは青い海原だ。
「……ええ?」
「海、行きたい」
睦月の言葉に暫し俺の脳が思考停止する。
え? 海? この真冬に?
雪でも降り出しそうな真冬日真っ只中な冬 の季節に海に行きたいと言われるとは思わず、恐る恐る聞き返した。
「なんで、海?」
「ユキと、海、行きたかったから」
「……あぁ、そうなんだ……?」
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