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君にあげたもの

 よくわからないが、睦月が行きたいというのなら別に行けなくはない距離に海があるので行く分には問題ないのだが。  そういうことなら尚さらマフラーくらいは付けた方がいいだろうと思ってしまう。 「……風邪引くと大変だし、せめてマフラーしてこい」  俺の言葉にきょとんとした顔をして瞬きする睦月だったが、何かを思い出したのかぽんっと手を打つとコクコクと大きく首を縦に振った。  そのまま家に戻っていく後ろ姿に小さく笑みが零れる。  暫くしてマフラーを首に巻いた睦月が戻ってきた。 「おかえり睦月。それじゃあ――え……」  睦月が巻いてきたマフラーには見覚えがあった。  白黒のチェック柄のマフラーは昨日俺が渡したもので、見覚えがあるなんてもんじゃない。 「折角、貰ったから。あったかい。ありがとう」 「そ、そうか……」  頬に熱が集まって、誤魔化すように顔をそらして首元に手を当てる。  こういう些細なことが幸せでうれしくて、思わず笑みが零れてしまった。 「ユキが笑った。良かった」 「わ、笑ってねぇ……っ」 「つんでれ」  ツンデレって……純粋だった睦月が知らぬ間に変な言葉を覚えてしまったようだ……。  いや、まぁ、もう高校生だけど。 「ほら、海行くんだろ。ちょっと歩くから、そろそろ向かうぞ」 「うんっ」  嬉しそうに返事をして睦月が隣に並ぶ。  やっぱり俺たちの距離は大人一人が入れるほどの距離があったけれど。  それでもいい。  睦月が隣にいてくれるならそれだけで、大人一人分の距離も、心でゼロにできると思うから。

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