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君と、海へ 2
「海、キレイ」
「そうだな。さて、ちょっと歩くか」
流石に立っているだけだと寒すぎて、俺は波打ち際に沿うように歩みを進めた。
その隣に並んで睦月もついてくる。
後ろを振り返れば二人分の足跡が刺繍のように続いていて、打ち寄せた波が攫っていく。
「……睦月、ありがとな」
「うん? なにか、言った?」
囁きにも似た小さな俺のつぶやきは、半分波に飲まれて睦月には届かなかったらしく、不思議そうに首を傾げられた。
「ううん。なんでも。それよりめちゃくちゃ遅いけど、昼飯どっかに食べに行くか」
「あ、待って」
防波堤の方に向きを変えようとして、慌てて呼び止める睦月の声に振り返った。
「あの、お弁当、作ったんだ。だから、一緒に食べよ?」
そう言って背負っていたリュックを一旦おろして、その中からお弁当箱を二つ取り出す。
「ま、まじで……? なんか気使わせて悪い……」
「あ、これは朝、作ったものだから……」
なんでわざわざ朝からお弁当を……?
しかもそれを二つも……。
そこまで思い至って俺はハッと顔を上げた。
「…………」
恥ずかしそうに頬を桜色に染める睦月が小さく微笑む。
誘いに来るかもわからないのに。
それでも、睦月は俺と出掛けることを想定して、それを用意してくれたのだろう。
そう考えただけで、涙が零れそうになった。
「……ありがとう。んじゃ、どっか風を遮れそうなところで食べるか」
「うん」
俺達は顔を見合わせると小さく笑い合う。
先程まで寒く感じた北風も、今は何故だかそこまで気にならなくなった。
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