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一緒に過ごしたい
クリスマスの翌日。
睦月は何事もなかったように俺の家を訪ねてきた。
触れたあと大丈夫だったのか聞くと
「大丈夫。ちょっと、苦しかったけど、ユキに触れられて、嬉しかった」
と顔を綻ばせて笑ってくれた。
その言葉だけで胸の奥が熱くなって、愛おしさが溢れる。
たとえそれ以上触れ合うことが叶わなくても、睦月が俺に触れたいと思ってくれたことがなによりも嬉しかった。
「ねぇ、ユキ」
「うん?」
睦月はどこか恥ずかしげに視線を逸らして俺の名前を呼んだ。
「あの、ね。……大晦日、今年は一緒に、過ごしたいな……。ダメ……?」
「え?」
そんな突然のお願いに驚いてしまい、不安そうな表情で俺を見つめてくる睦月の瞳を見返した。
大晦日。
一年の最後の日。
俺は大体、大晦日は両親の滞在する東京で年を明ける。
あちらは仕事の都合などでなかなかこっちまで帰ってくることが出来ないので、年末年始と夏休みはわざわざ俺からあちらへ遊びに行くのが恒例行事になっている。
十日くらい前にも両親から今年も来るのかと聞かれて「多分行くかも」と答えたが、睦月のこともあって少し濁した言い方をしていた。
「ユキ、毎年東京行くから……今年は一緒がいいなって、思って……その、だめなら全然……」
「睦月」
申し訳なさそうに俯く睦月に俺は優しく声をかける。
「大丈夫。今年は一緒に過ごそう。そうだ! どうせなら初詣も二人で行くか?」
大晦日に東京へ行って帰ってくるのは大体三が日を過ぎたあとなので、睦月とお正月を最後に過ごしたのは両親がまだこちらで仕事をしていた三年ほど前だ。
せっかく残るのだから睦月とたくさん一緒に過ごしたい。
出来たら、ずっとそばに居てほしい。
くだらない話でもしながら、ゲームしたりテレビ見たり散歩に出たりして、二人の思い出を増やしていきたい、というのが本音だった。
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