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文字越しの変わらない人
翌日、両親に今年は遊びに行かないとの連絡を入れた。
電話越しで聞く声は残念そうだったけれど、睦月と過ごしたいという旨を伝えると
『はー、そうなの〜。そうなのね〜。赤飯用意しなくちゃ〜!』
と盛大な勘違いのされ方をしてしまった。
これだから話をしたくないんだよな。
でも、俺の両親はずっと俺たちの関係を応援してくれていた唯一の存在なので、邪険に扱うことも出来ず。
一先ず要件を伝えて電話を切ると雅にメッセージを入れる。
どう誘おうか迷いつつ、初詣を三人で一緒に行かないかと言うことと、伝えたいことがあるということを打ち込んで震える指先で送信した。
雅からの返事はその日の夜に返ってきた。
『こんばん〜
ユキから誘ってくれるとか珍しいじゃんか。
俺はむしろ全然歓迎! じゃあ、元旦の十時に駅前で落ち合ってから一緒に行くってことで。
伝えたいこともそん時に聞くわー
んじゃ、睦月と仲良くな!』
明るめの文章はいつも通りで。
無機質なスマホの文字からは雅の本心は読み取れなかった。
それが、何故か凄く不安を煽ってくる。
俺は、どんな顔をして雅と話せばいいんだろうか。
「…………」
ベッドに寝転がったまま、スマホを枕に投げる。
正直断られると思っていたので、快い雅の返事に少しだけ陰鬱になってしまった。
だけど、誘ってしまったものはもうどうしようもない。
どんな反応をされても、俺はそれを受け止めないといけないから。
「……睦月」
愛しい人の名前を零す。
今度は俺が踏み出さなきゃいけない。
睦月が頑張って踏み出してくれたように。
俺も――
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