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二人きりの鍋パーティー
それから睦月が訪ねてきて、二人だけで大晦日の鍋パーティーを始める。
中でぐつぐつと煮込まれている食材を取り箸で呑水 に移して、それを食べながら去年の話をしたり、来年はどこに行きたいという他愛のない会話に花を咲かせた。
睦月は基本的に野菜が好きで、俺が勧めないとお肉などをそっちのけで野菜ばかり食べる癖がある。
逆に俺は無意識に肉にいってしまうので、睦月がたまに呑水の中に野菜を放り込んでくるのだ。
その仕返しに俺が肉を放り込む、というやり取りが結構楽しかった。
二人で鍋の中を平らげたあとは、まったり液晶テレビの中を流れていく映像に目を向ける。
楽しそうにコントをしている芸能人を見つめながら、ふぅ……と息を吐き出した。
実は明日の朝は睦月と二人で初日の出を見に行く約束をしている。
一応その前に、冬休みの課題を終わらせる予定でいた。
ただ、先にお風呂に入っておいた方がいいかもしれない。
「睦月、課題する前に風呂入っとこうか。俺、ちょっとお湯張ってくるから待っててくれ」
「あ、うん。わかった。……あ、あのっ、ユキ……!」
「うん?」
睦月が慌てた様子で呼び止めてきたので振り返ると、恥ずかしそうにこちらを見て小さく笑みを作った。
「えっと……その、お鍋、美味しかったね。それにユキがいたから、凄く楽しかった。ありがとう」
「……うん。俺も楽しかった。また来年もこうして二人でお鍋とかしようか」
「……! うんっ」
睦月は驚いた様子で目を見開いたあと、嬉しそうに笑顔を咲かせた。
「えっと、じゃあ、ホントに風呂張ってくるな」
「うん、お願いします」
律儀に頭を下げる睦月を一瞥してから、ソファから立ち上がり、風呂場へ向かう。
睦月の言葉の一つ一つが嬉しい。
嬉しすぎて思わず弾みそうな足をぐっと抑えた。
それでも込み上げる感情に、口元に笑みが浮かんでしまうことだけは、今日ばかりは許してほしい。
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