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芽生える欲望

 睦月と交代で風呂を済ませたあと、俺達は早速、冬休みの課題に取り掛かった。  こう見えて、睦月は勉強が出来るタイプなので、わからないことを教えてもらうこともあったりする。  ときどき睦月に質問しながら課題を進めていき、夜中の十二時前にようやく全部片付け終えた。 「う〜……もうしばらくは勉強したくねぇ……」  手に持っていたシャーペンをテーブルに転がして、そのまま後ろに倒れ込む。  柔らかいラグの上で両手を広げると、そのまま大きく伸びをした。 「お疲れ、ユキ」  睦月は俺より早く終わっていて、部屋の本棚に置いてあった漫画を読んで時間を潰していたようだ。 「ありがとう……。とりあえず、初日の出は睦月のお気に入りの廃ビルで見るとして、もうそろそろ寝るか?」 「……俺は、もう少しユキの隣で、ゆっくりしたいな」  何気なく呟いた言葉に睦月はそんな一言をポツリと零す。  手に持っていた本をテーブルの上に置いて立ち上がると、そろそろと俺の隣に移動してきた。  といっても触れられないので、いつも通りに大人一人が入れそうな距離に腰を降ろして、膝を抱えて座り込む。 「ユキといると、何もしてなくても、退屈じゃないから、不思議」 「……睦月」  膝を抱えた腕に頭を乗せて顔を綻ばせる睦月に、愛おしさが込み上げてくる。  いっそこのまま口づけでも交わせたらこの気持ちをもっと深く、睦月に伝えられるのに。  あわよくば、そのまま睦月と愛し合えたら幸せなのに。  近づくだけでも震えて顔を強張らせてしまう今は、それも叶わない。  それでもいい、と確かに思ってはいるけれど……。 (……そっか。両思いになったらもっと触れたい、その先が欲しいって、思っちゃうもんなんだな……) 自身の中に芽生え始めたどうしようもない欲望に、思わず眉を顰めてしまった。

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