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屋上へ

 それから悶々とした気持ちを胸に抱えたまま、気がついたら眠ってしまっていて、起きたときには五時になる十分前だった。  体は相当疲れていたのかもしれない。  慌てて支度をして外に出ると、睦月が既に門柱に寄りかかって待っていた。  スマホ画面を見ていた瞳がこちらに向いて俺の存在に気づいた瞬間、ぱっと笑顔を咲かせる。 「ユキ、おはよう」 「あ……うん。おはよう、睦月」  少し気まずくなりながらも返事をして笑みを零す。  そうすると同じように微笑んでくれた。 「えっと……んじゃ、とりあえず行くか」 「うん」  当たり前だがまだ外は真っ暗だ。  頭上には星の海が広がっていて、淡く光を瞬かせている。  宙に息を吐き出すと白い吐息が空にとけていく。  街はまだ眠っている店も多く、コンビニから漏れる光が前を通った俺と睦月を照らした。  いつもの廃ビルに到着して、建物の横にある折り返し階段を上る。  この階段は途中までしかなく、屋上まで続いているわけではない。  建物の三分の二程の所まであり、そこからは踊り場の壁に出来ている、人一人が屈んで入れるほどの穴から中に入って屋上へ向かう。  ここを最初に見つけたときは高いところに上りたくて、たまたまこの折り返し階段を上ったことがきっかけだった。  見つけた穴から中へ入り、二階ほど下の階へ降りて少し廊下を進んだ先に管理室なるものがあって、そこで屋上への鍵を見つけたのだ。  知られたら確実に怒られるのだろうが、ここの屋上から見える景色が好きで、バレないように中に入っていた。  幸いにも階段が建物と建物の間にあるので、人の目に触れることがあまりない。  睦月と二人、屋上の踊り場の前まで来ると鍵を開けて外へ続く扉を開く。 「寒っ!!」  空に近いこの場所は確かに見晴らしもいいしお気に入りの場所なのだが、とにかく寒いことだけが欠点だ。

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