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君を誓う
「……俺は、睦月が死んでまで触れたいって思わない。睦月がいなくなるくらいなら、一生触れられなくても構わない。触れることよりも、睦月が、隣にいてくれることの方がずっと嬉しいから」
いなくなってしまったら、触れることすら叶わなくなる。
“いつか”を夢見ることも出来なくなる。
「それがもしかするとお互いを苦しめてしまうかもしれない。たくさん辛い思いをしてしまうかもしれない。俺のワガママだし、自分勝手な意見だとは思う」
俺と睦月の間を流れる風に掻き消されないように、一言一言、力を込めて言葉を発する。
「それでも、俺は……触れ合えなくても、睦月の隣にいたい。睦月に、隣にいてほしいんだ。それだけは、嘘じゃない」
「……ユキ」
「もしも仮にお前が死んだとしたなら、俺も睦月のあとを追って死ぬし、睦月がどうしても辛くて死にたいって言うなら、俺も一緒に死んでやる。そういう覚悟で、睦月のそばにいるって決めたから」
朝焼けに染まる琥珀の瞳を見開いたまま固まっている睦月を見返した。
きっと、俺と睦月の関係は……危うい均衡で成り立っている。
触れる触れないに関わらず、お互いの気持ちはどこか平行線のままだ。
交わっているようで、交わらない気持ちが、とてつもなく……苦しい。
相手を思えば思うほど、大切にしようとすればするほど、どこにもいけなくなる。
それでも……一緒にいたいと願ってしまう。
睦月が望むなら、どこまでだって一緒に堕ちていったっていいと……思ってしまうのだ。
「……ユキ」
驚いたまま見開かれていた瞳が柔く細められ、困ったように眉が下げられた。
「……それ、重すぎ」
「あ……いや!! それくらい睦月のこと思ってるってことだからっ!」
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