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お揃いのお守り

「睦月は何の御守り買うつもりなんだ?」  社務所兼授与所に並んでいる御守りを見渡しながら、少し離れた場所であれこれと手にとっては戻してを繰り返している睦月に話しかけた。 「うん……ほしいの、たくさんある」 「やっぱり健康祈願の御守りとかか。こっちにかわいいのあるぞ」  ちょうど手に持っていた御守りを睦月の前においてやる。  それを手にとって俺の顔をじっと見つめると、 「これにする。ユキが勧めてくれたもの」  と顔を綻ばせた。 「そ、そうか」  睦月の笑顔にドキリとしつつも、もっと真剣に選んでから渡せばよかったと軽く後悔する。 「あとね、学業の御守りと、交通安全の御守りと、家内安全……あ、ユキ」  指折り数えながら楽しそうに話していた睦月が、急にぱっとこちらを向いて、真剣な顔つきになる。 「ど、どうした?」 「縁結びの御守り、お揃い、欲しい。一緒のにしよう?」  ぐっと少しだけこちらに身を乗り出して、そんなことお願いしてくる睦月に、俺の心臓は激しく乱れる。  くっそ可愛すぎる……。  というより嬉しい。これは素直に嬉しい。  思わず自慢してまわりたくなるほどの言葉に自然と口角が上がってしまう。  あぁ……どうしよう。幸せ。 「じゃあ、二人でどれにするか決めるか」 「うん! 可愛いの、欲しい」 「おう……」  可愛い御守りを自分が身につけているのを想像して、つい真顔になってしまう。  絶対似合わなそう……。  睦月だから似合うのであって、俺みたいな人間は、どう考えても女子あたりにドン引きされるだろ……。 (でも、睦月が喜んでくれるならいいか)  それから二人でどれがいいか決めながら、結局長く迷っていた俺達に巫女さんの一人が声をかけてくれて、縁結びのセットの御守りを勧めてくれた。 「今は素敵な時代ですね」  なんて俺と睦月を見て優しく笑ってくれるその人に、しどろもどろになりながら頭を下げて御守りが入った紙袋を受け取る。 「なんか、恥ずかしいな」

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