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お礼

 それから神社を離れて、昼食ついでにファミレスに入った。  雅への感謝の気持ちなので、もちろん俺の奢りだ。 「ホント、そんな大したことした覚えはねーけど、こういうの純粋に嬉しいから素直に受け取っとく」 「おーおー受け取っといてくれ。雅のそういう無自覚なところに感謝してるからな」  計算でやってたらまぁ、それはそれで別に構わないが。  俺たちを思って色々してくれてるというのは、今までの雅を見ていればわかる。 「ホント、ありがとな」 「な、なんだよ、改まって。いいってそういうの。俺ら友達だろ」 「……うん、そうだな」  そうだよな。友達、だもんな。  俺の前に座る睦月がこちらを見て少し戸惑うように視線を彷徨わせた。 「まぁ、ひとまず。たんと食ってくれ。一応、お金もしっかり持ってきたから」 「言ったな? んじゃ、普段あんま食わねぇサイコロステーキとか頼んじまうからなっ! んで、唐揚げとハンバーグととんかつとー」 「肉ばっかじゃねーか……野菜も食え。つかそんな入んねーだろっ」 「野菜はいらん! 男は肉で十分!! 俺、意外と食べるかんなー! 覚悟しろよー!」  肉は俺も好きだが、それだけで十分はねーだろ。  そんなことを心の中でツッコミながら、楽しそうに注文をしていく雅に笑みを零した。  そのままじっとこちらを見つめる睦月に視線を移して微笑みかける。 「……! えへへ」  一瞬だけ大きく目を見開いてから、同じように笑みを返してくれた。  視線だけでのやり取りが妙に心地良い。  こういう二人だけの秘密の時間が、少しずつ俺と睦月の距離を埋めていってくれている気がした。

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