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伝えたいこと 2
「俺、雅にすごいひどいこと、伝えようとしてるから……」
「…………」
伝えた方がいいとは思うが、仮にも好意を抱いていた相手から恋人になりました、などと聞きたいやつなんていないだろう。
俺だって出来たら聞きたくない。
だからこそ、わざわざそれを伝えるというのは、とても気が引けた。
お互いの間に流れる沈黙に耐えきれなくなりそうになった時、隣で雅が小さく笑い声を零した。
「確かにユキのこと好きだったけど……。まぁ、二人のこと見てると無理だって確信はあったからな。そんなユキが想像するほど傷ついてねーよ」
「…………っ」
そんなわけないはずなのに。
あの日の雅の涙を見て、“そんなに傷ついてない”なんて有り得ないのに。
「でも、ユキのこと好きだったからこそ、そういうの、ちゃんと報告してくれるなら嬉しいかな。そっかー、ユキはちゃんと幸せになったんだなって思えるしな」
「雅……」
隣に顔を向けると雅がいつもの笑顔で笑いかけてくれる。
それが悲しいのに、嬉しくて。
どうしてか、涙が出そうになった。
「ありがとう……」
「いーや、気にすんなってっ! で、付き合えたんだろ、二人」
いつもの調子でそう聞いてくる雅に頷き返す。
「あぁ、一応、ちゃんと付き合うことになった」
「そっか、良かったな! いやー、これで一安心だ。ちゃんとこれからも仲良くしろよー?」
「わかってるって」
背もたれに寄りかかってそう祝福の言葉をくれる雅は、やっぱり俺には太陽みたいに明るい存在で、少し安心してしまった。
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