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雅の変化

「それはそれでいいんだけどさ……」  明るく笑っていた雅の横顔が真剣なものになり、声色が固くなる。  その急な雰囲気の変化に首を傾げた。 「うん?」 「……その、さ…………」  妙に歯切れの悪い雅の態度に眉をひそめる。  こいつ自体が基本的に言いたいことはズバッと言ってしまうタイプなので、言い淀むということはあまりいい話ではないような気がしてしまう。  その雰囲気に不安になってしまって、俺の方から声をかけた。 「……なんだよ?」 「…………いや、やっぱなんでもねーわ。急に悪いな。俺の見間違いかもしれねぇし、そんなことでユキや睦月を不安にさせるのもちげーしな」 「は……はぁぁ??」  何か自分の中で納得したのか、固かった声と表情を崩していつも通りの見慣れた笑顔でそういう雅に、俺は強張っていた体から一気に力が抜けた。  というより、ここまで言われると逆に気になるぞ。  見間違いってどういう意味だ?  なんで雅が見間違えると、俺や睦月が不安になるんだ?  疑問は尽きないのに、なんだか今の雅は答えてくれないような気がして、俺は早々その話を切り上げることにする。 「まぁ、言いたくなったら言ってくれ」 「りょーかい〜」  ただ、どうしても気になったのは、珍しく雅が本気で心配そうな表情をしていたこと。  ――この時、もっとしっかり問い詰めておくべきだったのかもしれない。  見間違いだろうとなんだろうと、せめてそれがなんの事なのか、ちゃんと聞いていれば良かったのかもしれない。  不穏な影はゆっくり俺と睦月の傍に近づいてきていて。  そのことに、このときの俺はまだ、全く気づいていなかった――

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