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平穏の影に 3

 そんな俺の肩を誰かが叩いて、ビックリして後ろを振り返ると、見覚えのある顔がそこにあった。 「雅?」 「あ……もり……や……?」  ドクドクと暴れる心臓を押さえながら、同じくびっくりした顔で俺を見る守屋の顔を凝視した。 「どしたん? 顔、真っ青だぞ?」 「あ……いや、ちょっと……」  なんとか平静を装おうと、笑顔を浮かべる。  怪訝そうな表情で俺を見つめる守屋が「ホント、大丈夫か?」と繰り返し聞いてきた。  背中を流れる汗に一瞬眉を寄せて、大きく息を吐き出す。  そうすると、徐々に心臓が落ち着きを取り戻し、体の震えも止まった。 「……悪い。ちょっと、ホラーゲームしてたらめっちゃ怖くてさ」 「あー、雅、ホラー苦手だもんなー」 「なんでやろうと思ったんだよ」  いつも通りに笑いながらそういう守屋と新田に、俺も何とか笑顔を返した。 「なんか気になったんだよ。それよりさ、そろそろ出ようぜ」 「んだなー帰るかー」 「守屋、このあと塾じゃね?」 「あ、やべっ! マジだわ! じゃあ、今日はここで解散っつーことで!」  新田に指摘されて腕時計を見た守屋が、慌てた様子でゲームセンターから駆け出していく。 「ホント落ち着きねーな、あいつは」 「だな。ほら、新田もそろそろ帰ろうぜ」 「そうだな……って押すなって」  早くこの場所から離れたくて、俺は立ち止まっている新田の後ろに回ってその背中を押した。

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