123 / 166
平穏の影に 3
そんな俺の肩を誰かが叩いて、ビックリして後ろを振り返ると、見覚えのある顔がそこにあった。
「雅?」
「あ……もり……や……?」
ドクドクと暴れる心臓を押さえながら、同じくびっくりした顔で俺を見る守屋の顔を凝視した。
「どしたん? 顔、真っ青だぞ?」
「あ……いや、ちょっと……」
なんとか平静を装おうと、笑顔を浮かべる。
怪訝そうな表情で俺を見つめる守屋が「ホント、大丈夫か?」と繰り返し聞いてきた。
背中を流れる汗に一瞬眉を寄せて、大きく息を吐き出す。
そうすると、徐々に心臓が落ち着きを取り戻し、体の震えも止まった。
「……悪い。ちょっと、ホラーゲームしてたらめっちゃ怖くてさ」
「あー、雅、ホラー苦手だもんなー」
「なんでやろうと思ったんだよ」
いつも通りに笑いながらそういう守屋と新田に、俺も何とか笑顔を返した。
「なんか気になったんだよ。それよりさ、そろそろ出ようぜ」
「んだなー帰るかー」
「守屋、このあと塾じゃね?」
「あ、やべっ! マジだわ! じゃあ、今日はここで解散っつーことで!」
新田に指摘されて腕時計を見た守屋が、慌てた様子でゲームセンターから駆け出していく。
「ホント落ち着きねーな、あいつは」
「だな。ほら、新田もそろそろ帰ろうぜ」
「そうだな……って押すなって」
早くこの場所から離れたくて、俺は立ち止まっている新田の後ろに回ってその背中を押した。
ともだちにシェアしよう!