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雅の異変

◇ ◇ ◇  次の日の昼下り。  俺と睦月は雅に誘われて市民広場に来ていた。  俺たちが住む街でも結構広い公園で、川の側の地形を活かしたマウンテンバイクコースがあり、その他にもインラインスケートのコースやクライミングウォールがあったり、バスケットコートもあるという子供が喜びそうな場所だった。  サッカーなどが出来る広いグラウンドではしゃぎ回る小学生くらいのグループを見ながら、俺と睦月と雅は外側の遊歩道を歩いていた。 「せっかくここ来たんなら、なんか遊んでくか? マウンテンバイクなら確か有料貸し出ししてたと思うけど」 「んー、それするくらいなら三人で適当にキャッチボールしてた方が楽しいけどなぁ」  いつもより抑揚のない声でそういう雅に、俺と睦月は顔を見合わせて首を傾げた。  駅前で合流したときから雅はどこか浮かない顔をしていて、始終上の空の状態だった。  どうしたのか聞いても「いや、なんでも」と返されるだけで、原因もまるでわかっていない。  ただ、会話をする気はあるようで話しかければ返事はしてくれる。 (……もしかして、睦月と付き合ったことを言ったのが原因なのか?)  そう思うのだが、それもなにか違う気がした。  どのみち本人が話してくれないので俺からつつきにいくことも出来なくて、少し困っているところだ。 「ボールとグローブは、貸出所で借りれたはず」  睦月がグラウンドの向こう側を指差した。  つられるようにそちらに視線を向けて、先を行こうとする雅の腕を掴んで引き止める。 「雅、グローブとか借りに行こう。グラウンドの隅を通って突っ切った方が早い」 「あー、そうだな。行くか」  俺に言われたとおりに近くの階段を降りてグラウンドの隅を歩いて行く雅に、ため息が漏れる。 「あいつ、ボール投げたりして大丈夫かね?」 「キャッチしてくれるか、怪しい」  確かに怪しい。  ぼんやりして頭にでもぶつけたら大変だし、やっぱりキャッチボールはまずいか?

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