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明るいの両親

 両親とは駅前で合流する予定で、俺は早々ご飯を食べ終わるとご馳走様をして睦月に声をかけた。 「んじゃ、先行ってくるな」 「うん、いってらっしゃい、ユキ」 「おう、ご飯食い終わったら鍵かけておいてくれると助かる」  睦月には合鍵を作って渡してあるので、大体俺が先に出るときは睦月に戸締まりをお願いしている。  といってもそんなことは普段はあまりないが。  玄関で靴を履いて、外に出ると灰色の雪雲がかかっていた。 (どおりで寒いと思った。こりゃあ降るな)  急いで駅への道を走りながら、ポケットからスマホを取り出して時間を確認した。  ご飯の準備に手間取ってしまって、待ち合わせ時間ギリギリだ。  見慣れた駅が見えてくると丁度両親が駅内から出てきたところで、俺は声を上げて二人を呼んだ。 「母さん、父さん!」 「雪ーー!!」  走る俺に突っ込むように母親がこちらへ走ってきて、俺の体を抱きしめる。 「わっとっ!? ちょっ、公衆の面前!!」 「まぁまぁ、許してあげなさい。今年は雪が帰ってこないーって俺にわんわん泣き喚いていたんだぞ」  なんて恥ずかしい母親なのだろうか。  思わず目が据わってしまう。 「だって! 雪と会えないなんてお母さん、とっても寂しいのよ!! ねぇ、聞いてるの、雪〜!」  実は俺の母親は極度の息子大好き人間だ。  子離れできていない人で、会うたびにこうして抱きついてくる。 「でも雪が睦月ちゃんと一緒に過ごしたいって言うから、お母さんも応援しなきゃって泣く泣く諦めたのよ〜! ふえーん!」 「ガキかよ」  大人で「ふえーん!」とか声にして言うやつ初めて見たぞ……。 「でも、母さんのこういうところ、俺は大好きだよ」 「あら、お父さんわかってる〜!」 「はいはい、惚気惚気。ごちそーさんでした」 「雪つめたーい!」

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