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両親の優しさ
この二人、いつ見ても仲が良くて、たまに頭痛がするレベルのおしどり夫婦だ。
息子の前でくらい自重してほしいものだな……。
「惚気って言ったら……ねぇ、雪?」
母さんの甘えたような声とは裏腹な、いたずらっ子の微笑みに方頬が引きつる。
こういう顔の母さんは絶対に俺にとってマイナスな話しかしない。
「睦月ちゃんと上手くいったのかしら〜?」
「う、上手くいったって……なんの話だよ?」
「もう! そんなの雪が一番わかってるくせに〜! このこの〜」
俺の腕をツンツンしながら楽しそうにはしゃぐ母親の姿に、大きくため息をつく。
どこの女子高生のノリだよ……。
「で、雪。本当にどうなったんだい?」
「父さんまで……!」
「冗談ではなく、雪と睦月くんを見てきた俺達だからこそ、二人のことが気になるんだよ」
茶化すでも怒るでもなく、優しく笑みを浮かべて見つめてくる父さんに、俺は少しうつむいて答えた。
「……その、付き合うことに、なりました……」
「あら〜、そうなの! 良かった〜! お母さんずっと心配してたのよ!」
俺に抱きつきながら髪をわしゃわしゃ撫でてくる母さんに、小さく笑みを返した。
「そうか。安心したよ。世間的にはまだまだ肩身が狭いが、雪と睦月くんなら乗り越えていけるだろう」
「父さん……ありがとう……」
この二人に俺が睦月に対して思いを抱いているとバレたのは、睦月が今の状態になって少ししてからだ。
最初はただ近所の子ということでよく遊んでいて、友達感覚で好きになんだろうと思っていたらしいのだが、俺の睦月へ向ける態度や視線で気づいてしまったみたいだ。
問いただされたときは否定していたのだが、この二人になら話してもいいかなと思って気持ちを打ち明けた。
俺からの話を聞いた二人は戸惑った様子ながらも、その気持ちを受け入れてくれて。
だけど、睦月は精神的な病気やその病気になるきっかけのこともあって、配慮してそばに居るようにと強く言われた。
それが出来るなら、俺がしたいようにしてもいい、と。
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