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偵察に
そういうこともあって、この二人には頭が上がらないのだ。
「ほらほら〜! せっかくだし、二人のお付き合いのお話を聞くついでに、美味しいもの食べに行きましょ〜! 雪、何が食べたい?」
相変わらずテンションの高い母さんに、父さんと二人で小さく笑い合ってから口を開く。
「俺はなんでもいいよ。どうせなら、母さんの好きなお寿司でも食べに行ったらどうだ?」
「雪ー! お母さんの好きなもの、ちゃんと覚えてたんだー! 嬉しい! 愛してるーー!」
「はいはい、わかったわかった。ほら、遅くなるし行こうって」
駅前で騒ぐ母さんの頭を小突いて、体から引き離す。
周りから奇異の視線が降り注いでいて、流石に恥ずかしかった。
「そうだな。こっちでよく行っていたお寿司屋さんに行こうか。タクシー呼んでくるよ」
父さんが近くに停まっていたタクシーに声をかけて、こちらに手招きする。
「ふふ、雪。ちゃんと話を聞かせてね」
こっそり耳打ちしてくる母さんに苦笑を漏らして、
「お手柔らかにお願いします……」
とだけ伝えておいた。
うん、絶対に根掘り葉掘り聞かれそうだな。
◇ ◇ ◇
昼下がりの午後。
「確か駅前、だったよな?」
俺は頭の帽子を少しあげて、辺りを見渡した。
あのゲームセンターでの一件が妙に気になってしまい、そのときに聞いた“駅前に集合”という言葉だけを頼りに駅前 に来ていた。
辺りを見渡してみるがそれらしい人影や集まりはなく、いつも通りの風景が広がっている。
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