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忍び寄る悪意
「雅じゃないか。ちょうど連絡しようと思ってたんだ」
俺の前まで来て息を整える雅を見下ろしながら、手に持っていた紙袋を差し出した。
「これ、雅へのお土産。よかったら――」
「そんなことより、ユキ……! 聞きたいことがあるんだ……!」
膝に手をついていた雅が、バッと顔を上げて俺の肩を掴む。
いきなりのことにびっくりしてしまい、手に持っていた紙袋を地面に落としてしまった。
「……どうした?」
あまりの切羽詰まった声色に俺は眉をひそめる。
雅の顔に浮かんだ表情が、どこか嫌な予感を感じさせた。
「……睦月の父親について、ユキに、どうしても話しておきたいことがある……」
◇ ◇ ◇
診察も終わって、院内から出ると真っ白な雪が辺りをふわふわと舞い踊っていた。
病院近くの公園の中を歩きながら、その舞い落ちる白を見上げる。
「雪だ……キレイ」
今日はケアマネージャーとの面談や採血があり、いつもよりずっと遅くなっていた。
薄暗く染まり夜へ移り変わろうとしている外の景色をじっと見つめて息を吐き出した。
「……さむい」
いつもならユキが隣にいるのに、今日は俺の横には誰もいない。
いつの間にか当たり前になっていたその姿が見えないことが、すごく寂しかった。
「…………ユキ」
小さく名前をつぶやく。
連絡をしてみようと、ポケットからスマホを取り出してメッセージアプリを開いた。
「ねぇ、君。雨月睦月くんだよね?」
「え?」
突然耳に届いた声に、スマホに落としていた視線を上げた。
目の前には見知らぬ男が一人立っていて、ニッコリと人のいい笑顔を浮かべている。
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