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忍び寄る悪意 2

「……えっと、誰、ですか?」  その張り付けたような笑みがなんだか気持ち悪くて、一歩後退って距離を開けた。 「あー、俺のことはいいんだよ。それより、雨月睦月くんであってるよね?」 「ち、違いま――」 「これ」  そう言って目の前に出された写真は、いつ撮られたものなのか、ユキと話して笑っている自分の姿が写っていた。  写真の中の二人は楽しそうで。  なのに、それを突きつけてくる男の目は――とてつもなく恐怖を感じる。  そもそも、なぜ、そんなものを持っているのか。  なぜ、自分に声をかけてくるのか。  そう考えただけで恐怖に足が震えた。 「あってるよね? ちょっと俺らに付き合ってほしいんだけど」 「い、いやだ……」  ジリジリと震える足で距離を取りながら、辺りを見渡した。  そうしたことで初めて気づく。  自分の背後からもう二人、ガタイの良い男が草薮から出てきていた。  その口元はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべて、品定めするように俺の体を視線で舐め回す。  ――知っている。この視線の意味を。  背中を冷や汗が伝い落ちていく。  ――逃げないと。  そうしなければ、またあの頃と同じ苦しみと痛みを味わうことになる。  そう思った瞬間、突き動かされるように俺の足は横にある草藪の中に駆け出していた。  後ろは二人いて絶対に逃げ切れない。  前の男をすり抜けて逃げられる気もしない。  なら、せめて木々に隠れながら逃げ切らないと――!

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