144 / 166
★恐怖の中で 2
何が起きたのかなんて頭ではもう理解できなくて、無遠慮に打ち込まれる快感に俺の意識はどんどん仄暗い海底へおとされていく。
どうして――
どうして、こんなことに……?
自分の意思とは裏腹に反応する体に、先ほど喉を通ったものが、何なのかを悟った。
昔も何度も飲まされたもの。
何度も、何度も。
俺の体をおかしくさせたもの。
耳に届く下卑た笑い声と汚い息遣いが、体中を襲う快感が、現実から逃げ出そうとする俺の意識を無理矢理引き上げて、繋ぎ止める。
一人が果てればまた次の男が中に侵入してきて、おもちゃでも扱うように俺の体を好き勝手に弄ぶ。
もう、なにも考えたくなくて、感じたくなくて。
俺は人形のように自身の体を委ね続けた。
早く、終わってほしい。
早く――
「もうそろそろ手の縄もいらんか。テツ、このナイフで切ってくれや」
指示を出された一人の男が、俺の体を蹂躙している男から大型のダガーナイフを受け取った。
そのやり取りを横目に、朦朧とする視界の中、辺りを見渡す。
いつもは優しい明かりに見えた暖色の照明は、今は冷たい色に映り、暖かく包んでくれていた布団は、シーツごとぐちゃぐちゃに乱されて、汚い液体がシミを作っていた。
ザクリと何かを切る音がして腕が軽くなる。
自由になった腕は送り込まれる快感に抗うように、無意識にシーツを掴む。
明滅を繰り返す視界の片隅に転がるユキからもらった羊のぬいぐるみを見つめながら、俺はされるがままに体を揺さぶられ続けた。
ともだちにシェアしよう!