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反撃
後ろに倒れる男を何とか蹴り飛ばして、今度はそばにいた男を力づくで押し倒し、その喉元にナイフを突き立てる。
そこから血が吹き出して飛沫する様子をぼんやりと見つめた。
悲鳴を上げる間もなく口から赤い体液を吐き出す男に跨がりながら、乱れた息を整え、次の男へ顔を向ける、が。
「あ"ぅッ!!」
背後から大きな体で組み敷かれてしまい、体の自由が奪われる。
「あ"っ、がは…っ」
首の後ろから太い腕で抑え込まれて、頸椎が軋みを上げる。
「あーらぁ、死んでるわ。殺すなとは言ったが、まさか殺されるとは思わなかったな」
聞き慣れた声が頭上から聞こえて、俺は痛みに耐えながら目の前に立つ男を睨みつけた。
「こういう反抗が出来るようなったんだなぁ。見誤っとったわ」
「かは…っ、ぅ、ぐ……っ」
ギリギリと押さえつける男の腕に、どんどん力が込められていく。
痛い、痛い、痛い。
それでも、やらなきゃ。……殺らなきゃ!!
その一心で手に持っていたナイフを逆手に持ち、自身の上に跨がる男の足に容赦なく矛先を突き立てる。
悲鳴を上げて転がり落ちたのを確認してから、男の心臓にナイフを突き立てた。
「がぁぁああッ!!」
「ちっ……」
心臓に貫通したのか、ピクリと一度跳ねてから物言わぬ亡骸になった男を一瞥して、震える体で立ち上がった。
視線を向けた先に立つ父親の虫けらでも見るような瞳に身が竦んだ。
未だ、この人を前にしてしまうと体が拒絶反応を起こす。
それでもこいつを殺さないと、俺は自由になれない。
そう悟ったときには、体は手に持ったナイフを目の前の男に向けて走り出していた。
「このッ!!」
勢いをつけてナイフを振り切るが、長く太い足に蹴り飛ばされて床を転がる。
反動で傾いた隙を狙ってナイフを蹴り飛ばした足がお腹に直撃して、あまりの激痛にその場に崩れ落ちた。
「かは……ッ、ゔぅ……っ」
「どうも躾が足らんかったようだな」
「ぇ――」
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