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写真に写る男

 それから、同じ高校に入学して、暫くしてから雅に出会った。  そう。  睦月が今の状態に至るまで、八年ほどかかっているのだ。  八年の間、ひたすらひたすら目の前の現実だけに目を向けてきた。  あんな男の存在なんてもう二度と認識なんてしたくないと、そう思って生きてきた。  だけど、八年だ。  あの日、告げられた懲役の年数は確か、七年、だったはず。  そう教えられたときには、七年後また現実に戻ってくるのかと、ただただ不安な日々を過ごしていた。  それでも、立て直せたのは睦月の面倒を見ることで、安全な場所にちゃんといるという現実があったからだ。 「……確かに、出てきては、いるだろうけど……」  だから、なんだと言うのだろうか。 「前に」  戸惑う俺とは違い、雅はゆっくり顔を上げてこちらを見ると、真剣な表情で口を開いた。 「ユキから、睦月の家族の写真を見せてもらったよな?」 「……えっと、確かに、見せたけど……」  正確には俺というよりは睦月が、だが。  雅と親しくなって、なんで睦月がこんな状態なのかって話になったときに、睦月から許可を取って両親の写真を雅に見せてやったことがあった。 「だよな。印象に残る人たちだったから、覚えてたのかもしれない」  そう言いながら、雅は上着のポケットからスマホを取り出してそっと机の上に置いた。 「これ……。今日、撮った写真。見間違いじゃなきゃ、この人、ちょっと前にコンビニ近くで見たんだよ」  画面に写っていたのは、遠くからさっと撮ったものなのか、ピントがややぼやけた写真だった。  三人ほど男が屯していて、その中心に栗色の髪の男がどっかりと座り込んでいる。  顔までははっきりと見えないが、ぱっと見た感じでもなんとなくこの男が誰なのかわかってしまった。  嫌というほど見た、睦月の父親に、似ていた。 「……ちょっと前に見たって……いつ……」 「……ほら初詣の日。ユキと睦月に気を使ってコンビニまで行ったじゃん? そんときに」

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