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睦月をさがして

 確かに初詣の日、雅は俺と睦月に気を使ってフライドポテトと飲み物を買いに行った。  時間をかけるためにと、近くのコンビニまでわざわざ行ったということもちゃんと聞いていた。 「んで、その次の日にさ、守屋と新田と三人でゲーセンに行ったんだよ」 「………」 「そんときに、こいつらがゲーセンの端の方で話してるのを聞いたんだ。その内容が気になっちまって、会話の中で聞こえた駅前に集合って言葉を信じて、今日、ここに来てみた。そしたら、触れたら暴れるとか、ヤるとかって話ててさ……まさかとは思うんだけど……」 「……そ、んなの……」  嫌な、予感がする。  背中にヒヤリとした汗が流れて、胸の鼓動が早くなる。  そんなときに、ふいにポケットの中が震えた。 「……?」  振動を繰り返すスマホをポケットから取り出すと画面を確認しようとして――タイミングよくバイブレーションがピタリと止まる。  ロック画面に表示されている着信経歴には「雨月 睦月」という名前だけが無機質に映し出されていた。 「ユキ?」  いつものような電話じゃないか。  きっと睦月はいま病院が終わって、たまたまかけてきただけだろ。  そう、思いたいのに。 「……っ! 雅、俺、今日は帰る! これ、ここの支払いのお金!」 「え、あ……! おいっ! ユキ!!」  椅子から立ち上がると、財布から適当に千円札を二枚取り出し雅の手に握らせ、急いでカフェを後にする。  呼び止める声が聞こえた気がしたが、今はそれどころではなかった。  嫌な予感がひたすら俺の心の中を覆い尽くす。  睦月がどこにいるかなんてわからない。  それでも、一番先に思い浮かんだのは自宅だった。  もしいなければ別の場所を探せばいい。  ふわふわと舞い落ちる雪が、家への道を駆け抜ける俺の横を通り過ぎていく。 (睦月……っ、睦月……! 頼むから、無事でいてくれ……!)  ひたすら祈る思いで足を動かしながら、いつもよりずっと長く感じる自宅への道を走り抜けた。

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