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赤い惨状

 鍵穴に差し込んで解錠すると、なるべく音を立てないようにドアをゆっくりと開けた。 「お邪魔します……」  小さな声で呟いて、中に足を踏み入れる。  静まり返った一階は、明かりが一つもついていないため真っ暗で何も見えない。  電気をつけても良かったのだが、何かあると大変なので、スマホのライトを起動して辺りを照らした。  とくに荒らされたような感じはなく、いつも通りの光景が広がっている。  二階を見上げてみるが、物音一つしなかった。  不気味なほど静まり返った家の中に、心の中で燻っている不安が更に大きくなっていく。 「……とりあえず、電気ついてたし、睦月の部屋を確認してみよう……」  スマホのライトで上階を照らしてから、足音を立てないように階段を登った。  二階には部屋が二つあり、一つは昔睦月の両親が寝室に使っていた部屋で、今は物置きになっていたはず。  もう一つが睦月の自室だった。  念のため先に寝室の方を見てみようと足を踏み出した時に、何かが当たったような小さな音がした。 「睦月…………?」  俺は寝室に踏み出そうてしていた足を睦月の部屋へ向けて、ドアノブに手をかけるとそっと扉を開けた。  開いた隙間から妙に鼻につく臭いがして思わず眉をしかめつつ中を覗き込んだ瞬間、視界に映った光景に俺は小さな悲鳴を上げた。  ベッタリと床に塗りたくられたような赤に、心臓がドクンドクンと大きく跳ねる。  そこからゆっくり視線を移動させていくと、血を流した男が三人倒れている姿が見え、思わず口元を押さえた。 「……な、んだ……これ……」  いつもは床にキレイに並べられているぬいぐるみもぐちゃぐちゃに荒らされており、真っ赤な血でその身を染め上げている。 「睦月……?」  そのままベッドの方へ顔を向けると、ようやく探し求めていた人の姿が視界に飛び込んできた。

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