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最期の願い
「……っ、ふ……ぅう……っ」
大切な人の命を奪う、という行為が、俺の心に大きな傷をつけていく。
睦月が殺してほしいと望んでいるなら殺してもいいのか?
こんなにも大好きで、大切で、愛してる相手を。
俺が、遠いところへ行かせてしまうのか……?
だけど、そうしなければ、睦月は死ぬまでずっと、この痛みに苦しめられる。
「む……つき……」
手に持ったナイフをゆっくり心臓の位置に突き立てる。
「ユキ、ごめん、ね……。こんなこと、おねがいして……」
「……おれ、も……ごめ……、ごめん……っ」
なにも、してやれなくて。
ずっと守っていくと誓ったのに。
そばにいると、約束したのに。
でも、いま、睦月を救えるのは俺しかいない。
俺だけが、救ってやれる。
それなら、そうするのが愛なのだろうか。
そうすることが、ただしい選択、なのだろうか。
「……ユキ」
迷う心に、ここ最近やっと聞き慣れた小さな声が届いた。
「……だい、じょ、ぶ……さよなら、じゃ、ないよ」
「…………」
「ずっと、いっしょ、だよ……やくそく……」
ずっと……。
その言葉を頭の中で何度も何度も繰り返す。
「……う、ん。……うん」
微笑む睦月に応えるように握りしめていた手を離して、小指を絡める。
あの日出来なかった約束をもう一度繰り返すように。
「ユキ……も、ひとつ……おねがい……」
苦痛に顔を歪めてから、無理やり笑顔を作る睦月の次の言葉を待った。
「さいごに、キス、して、ほしいな……。ユキと、したい……」
「…………っ」
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