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独り
夢で、あればいいのにと……何度も思った。
きっと今も俺は眠っていて、もうすぐこの悪夢から目を覚ます。
そうしたら、目の前に起こしに来てくれた睦月がいて。
笑顔で「おはよう」って声をかけてくれて。
俺も「おはよう」って返すんだ。
いつものように朝ごはんを食べて、学校へ向かって。
雅と三人で過ごしながら。
放課後はデートにでかけて、二人の時間を過ごす。
家に帰ったら、睦月のために、夕飯を作って。
あ、そうだ。
最近は二人でご飯を作るようになったんだった。
睦月が料理の練習をしたいって言い出したからだっけ。
二人で作ったご飯はとても美味しくて。
幸せで――
夕飯のあとは、お風呂に入って、睦月が帰る時間まで一緒に過ごすんだよな。
時間になっても離れたくないねって言い合って、それでも明日も学校だからって。
「またね」って……名残惜しくても、睦月を見送る。
でも、明日も会えるもんな。
また睦月に会えるから。
寂しくない。
――さみしくないよ。
…………なぁ、睦月。
どうして、こうなったんだっけ……?
どうして、夢じゃないんだろう。
どうして……俺は、今――独りなんだろう。
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