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第4話
「今まで誰とも?中学の時とかも?」
勢い込んで聞く黒木を、邦彦は不思議そうに見た。
「小学校の頃からずっとサッカーやってて、女子と付き合う暇なんてなかった」
「ああ、サッカーバカ…」
そこで教師が入ってきたので、話しは終わった。
役員会が終わり、教師が出て行ったのに続いて黒木と尾崎も帰っていった。
「お前、サッカーやめても彼女作んないの?」
ディパックの中をなんとなく整理しながら、時生は邦彦に聞いた。
時生と邦彦は、高一のとき同じクラスになってからの付き合いだ。
時生は軽音部で軽薄にギターをかき鳴らしていて、邦彦は学校一練習が厳しいと評判のサッカー部で次のエースストライカーと期待され、キツい練習に耐えていた。
人懐っこくて明るい時生は男女問わず友達が多く、いつも複数の友人に囲まれていた。
邦彦は体育会系の人間にも関わらず、物静かで教室で一人で本を読んでいることも多かった。
クラスメートということくらいしか接点がない二人だが、一人でいる人間を見ると放ってはおけない時生がある日、アプローチした。
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