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第6話
話してみると邦彦は特別無愛想という訳でもなく、お互いの得意分野のサッカーや音楽、最近読んだ本、テレビのお笑い番組のことなど、時生が話す方が多いとはいえ会話するのを嫌がる風もなく、思ったよりもずっと気さくな人間だった。
ただ、アイドルタレントには興味が無いらしく、大人数のアイドルグループの誰が推しメンなのか聞いても返事は無かった。それでは、とグラビアアイドルの扇情的な写真を載せた雑誌を見せても、特に反応はなく、エロトークに花を咲かせたかった時生をがっかりさせた。
他方で、ヨーロッパや南米のサッカーチームの選手の名前はさすがによく知っていて、先日見た彼らの素晴らしいプレイを熱く語ってくれるのだが、時生にはついていける話題でもなかった。
それでも二人は意外と気が合い、2年生になってクラスが分かれても、昼食を一緒にとるほど仲良くなった。
時生とたまに街に遊びに行ったりする以外は、サッカー一色な日々を送っていた邦彦に転機が訪れたのは、2年生のゴールデンウィーク明けのある日だった。
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