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第8話

邦彦が病院のベッドで、白い天井を見上げながらぼんやりしていると、目の端に人影が写った。そちらに視線を転じてみると、シリアスな表情を浮かべた時生が立っていた。 「なんて顔してんだよ」 邦彦がそう言って口の端でニヤッと笑うと、時生も安心したように笑った。 「怪我したって聞いて、ホントはすぐに見舞いに来たかったんだけど…」 時生は言いにくそうに言葉に詰まった。邦彦が先を促すように見つめると、時生が微かに頬を赤らめながらいった。 「お前のことだから、親とか部活の仲間とかには平気平気って意地はってるだろ?でも、そろそろ弱音を吐きたくなった頃かなって」 時生が近づいてきて、邦彦の肩に手を乗せた。 「俺にまで意地はったら、泣き言言える相手がいなくなんじゃん」 邦彦は時生の腰に腕を回すと、胸に顔をうずめた。 時生の胸に顔を押し付けて声を殺し、怪我をして以来初めて泣いた。 時生は自分をグッと抱きしめながら、肩を震わせている邦彦の頭を、気持ちを落ち着けるようにいつまでもそっと撫でていた。

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