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第9話

ひと月ほどの入院のあと、邦彦は学校へ戻った。 まだギプスはとれておらず松葉杖をつきながらだが、元来の運動神経の良さで器用に動いていた。時生をはじめとするクラスメートや友人たちにあれこれと世話を焼かれながら、邦彦はあまり不自由のない学校生活を送っていたが、やはり部活のない生活は暇を持て余しているようだった。 夏休みが明ける頃には、邦彦のギプスもとれ、リハビリも順調に進み、ほとんど以前のように歩けるようになっていた。 リハビリの回数も減り、邦彦がいよいよサッカー以外に何か打ち込めるものを探そうかと思い始めた頃、時生が1枚のプリントをもってきた。 「生徒会長に立候補しろよ」 「はあ?」 いきなりの発言に戸惑う邦彦をよそに、時生はとても良いことを言っていると満面の笑みを浮かべていた。 「お前だったら絶対通るよ。サッカー部やめて暇してんだろ?」 時生から、生徒会役員選挙のプリントを受け取りながら、邦彦はそれも良いかなと思い始めていた。 怪我がなければ、サッカー部の次のキャプテンは邦彦にほぼ決まっていた。ハンサムな容貌だけでなく、物静かで感情をあまり表に出さないが、正義感が強く、誰に対しても公平な態度が周りの人間に信頼感を与えていた。 邦彦が生徒会長なんてぴったりだよ!と時生に興奮気味に言われて、邦彦もだんだんその気になってきた。

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