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第11話

「教えて欲しい」 「…何を?」 「キスの仕方、とか」 「キス…?」 「…」 「…」 「いーやーだー‼︎」 慌てて立ち上がろうとした時生の肩を邦彦がガシッと押さえた。 「なななっ!なんでオレ⁉︎男じゃん!無理無理無理‼︎」 邦彦のとんでもない提案を今更ながら理解したが、体をガッチリ押さえ込まれて逃げ出すには遅かった。 「女子にこんなこと頼んだらセクハラになるだろ。キスなんて男も女もおんなじだし」 「お、男相手でもセクハラなんじゃ…」 「時生、お前、俺の親友だよな。俺を見捨てたりしないよな?」 時生は確かに邦彦の親友だったが、いつも微かな劣等感を感じていた。 スポーツも勉強も、他人からの信頼度も、邦彦に勝てるものは何もなかった。女子からのモテ度さえも、ジャ○ーズ系の甘くて幼いマスクの時生より、スポーツマンらしい爽やかでストイックな邦彦の方が上だと感じていた。 邦彦が、全てにおいて時生を上回っていることを全く鼻にかける様子がないので、時生も日頃は気にしないようにしているのだが、いつも飄々としている邦彦をたまに憎らしく感じることがあった。 そんな邦彦が、今時生に縋らんばかりに懇願している。時生の中に今まで感じたことのない優越感が湧き上がってきた。 「時生、頼む。こんなこと頼めるの、お前しかいないんだ」 「邦彦…」 時生は易々と邦彦の手に落ちた。

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