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第12話

並んで座っていたソファーに押し倒され、邦彦がぐっと顔を近づけた。 (顎に剃り残しがある) そんなことをぼんやり考えていた時生の頬に、邦彦は軽く唇で触れた。まさか頬だとは思っていなかった時生は、不意打ちに動揺して赤くなった。 尚も、まぶたや額、鼻先などをなぞるように唇を這わせ、邦彦は時生を焦らした。時生は緊張のあまり胸の動悸を感じ、息が荒くなってきた。体の上にのし掛かられて、手も足もホールドされてほとんど動けない。 最初に触れたのと反対の頬を啄んでいると、 「邦彦…」 と、とうとう時生が掠れた声を出した。それを合図のように、邦彦が時生の口を塞いだ。 邦彦の唇の意外な柔らかさを朦朧とした意識の中で感じていると、時生の唇を割って入ってきた舌に歯列をなめられた。驚いた拍子に少し空いた口の中にするりと差し込まれた舌は、時生の舌に絡みつき、上顎の内側を舐めた。 時生は息が詰まりそうになるほど感じて、邦彦の腕を掴んだ指に力を入れた。 邦彦の舌はさらに執拗に時生の口の中をかき回した。長いキスの後、ようやく邦彦の唇から離れ、時生は大きく息を吸った。 「どう?」 邦彦に聞かれ、時生は真っ赤になった。あんなすごいキスは初めてだった。 「あ、あの…」 言葉に詰まる時生を、邦彦は優しく抱きしめた。 「お前、最高。また練習に付き合ってくれ」 首筋に息を吹きかけながら甘く囁かれて、時生は思わず頷いていた。

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