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第18話
「もう、やめた方が良くねえ?」
「うん?」
邦彦が唇を離したとき、自分の唇との間に唾液が引いた糸を見ながら時生が言った。ティッシュペーパーで時生の唇を拭いてやりながら、邦彦が首を傾げた。
「…こないだ、女子に手紙貰ってたじゃん。もう、充分上手いと思うから、こういうこと、女子とやった方がいいんじゃねえの?」
「そうか。お前が嫌ならやめるよ」
「オレが嫌とかじゃなくて…」
ソファーに体を起こして、時生は俯いた。
邦彦は時生をじっと見つめていたが、小さくため息をついて立ち上がった。
「分かった。もうやめよう」
時生がハッと顔を上げた。
「今まで付き合ってくれてありがとう」
「邦彦…」
「練習の成果をどこかで活かすよ」
邦彦は時生の頬に手を当てて微笑むと、カバンを肩にかけて生徒会室を出て行った。
後に取り残された時生は、茫然として邦彦の消えたドアを見ていた。
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