18 / 29

第18話

「もう、やめた方が良くねえ?」 「うん?」 邦彦が唇を離したとき、自分の唇との間に唾液が引いた糸を見ながら時生が言った。ティッシュペーパーで時生の唇を拭いてやりながら、邦彦が首を傾げた。 「…こないだ、女子に手紙貰ってたじゃん。もう、充分上手いと思うから、こういうこと、女子とやった方がいいんじゃねえの?」 「そうか。お前が嫌ならやめるよ」 「オレが嫌とかじゃなくて…」 ソファーに体を起こして、時生は俯いた。 邦彦は時生をじっと見つめていたが、小さくため息をついて立ち上がった。 「分かった。もうやめよう」 時生がハッと顔を上げた。 「今まで付き合ってくれてありがとう」 「邦彦…」 「練習の成果をどこかで活かすよ」 邦彦は時生の頬に手を当てて微笑むと、カバンを肩にかけて生徒会室を出て行った。 後に取り残された時生は、茫然として邦彦の消えたドアを見ていた。

ともだちにシェアしよう!