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第19話
3学期の大イベント、校内ウォークラリー、卒業式が無事終了し、生徒会としての今年度の仕事は終わった。
校内ウォークラリーは、学校のある地域を4、5人のグループでチェックポイントを通過しながら10キロのコースを歩く、1、2年生は必須、3年生は希望者のみ参加の冬の体力作りイベントでだった。生徒会主催の大きなイベントだったが、膝を痛めている邦彦は参加が出来ず、途中のチェックポイントで歩いてくる生徒たちにスポーツドリンクのペットボトルを渡していた。テーブルを3つ用意して、他に参加出来なかった生徒や、先生、ボランティアの保護者などがそれぞれ渡していたが、邦彦に女子生徒が集中しがちで、先生が苦笑いしながら生徒を捌いていた。
時生は同じグループの4人ほどの仲間と、中くらいの順位でチェックポイントにたどり着き、手前のテーブルに近づいて行った。すると「時生!」と邦彦が声をかけ、手招きをしたので時生がとぼとぼとそちらに近寄ると、邦彦がペットボトルを渡しながら、時生の顔の汗を自分のタオルで拭ってくれた。
「がんばれよ、副会長」
「おう…」
邦彦に子供のように顔を拭われたことが恥ずかしく、時生が顔を赤らめていると、案の定、隣で他の生徒にボトルを渡していた先生に言われた。
「森井くんと北村くんは、会長と副会長と言うより、兄と弟みたいね」
「しっかり者の俺が兄ということですかね」
「うるせえ」
時生は顔をしかめたが、邦彦に笑顔で送り出された。
みんなの手前、邦彦にからかわれて表向きぷりぷりしながら歩き始めたが、キスするのをやめて以来、なんとなくギクシャクしていた邦彦との仲が以前のように戻った気がして嬉しかった。
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