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第20話
卒業式では、邦彦の素晴らしい送辞が式場中の涙と感動を誘った。卒業生や保護者、来賓、在校生たちに向かって、堂々とした態度で送辞を読み上げた邦彦の凛々しい姿を、時生は生徒会席から惚れぼれと見つめていた。
新年度になって、時生たちは3年生に進級した。書記の尾崎にも彼女が出来、鬱陶しく浮かれていた。
時生と磨いたテクニックをどこかで活かすと言っていた邦彦には、まだ浮いた噂はなかった。あの日手紙をくれた女子は断ったらしい。
時生も、バレンタインデーに本命チョコをいくつか貰ったが、その気になれず断った。
あれから、邦彦と時生はキスしていない。
邦彦は、何か憑き物が落ちたようにその事に全く触れる事はなく、いっ時あったよそよそしさも今はもう無く、仲の良い友人同士に戻っていた。
狐につままれた様な思いをしていた時生も、邦彦はあの時期何かおかしかったのだろうと自分を納得させていた。
ただ、時生は健康な男子高校生である。男と言えども、性的な欲求を刺激する邦彦の巧みなキスで体が感じやすくなり、学校で邦彦の姿を見かけると体が火照り、恋人のいない今はその昂りを自分で処理するしかなかった。
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