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第8話

その日の私は、杉原先輩を見るのが、いえ杉原先輩に見られるのが辛くて……お昼休みが始まる寸前に逃げるように早退を願い出ました。 具合が悪いのなら保健室に行くように言われましたが、鈴木先生のところには死んでも行きたくないので、とても卑怯でご迷惑かと思いましたが杉原先輩のお母さんの『小雪さん』に保護者になってくださいとお願いをして学校に電話を入れてもらい、私の家の車で『小雪さん』のもとに直行しました。 杉原先輩のご実家『清水(しみず)』は京都の茶道の名家の分家だそうで、都内の何故かホテル街の奥にある綺麗な日本家屋な町並みにあるとても品のある素敵な日本家屋です。 瓦屋根に頑丈そうな太い柱をふんだんに使ってある建物が私にはとても魅力的で、私の住む自宅とは真逆でとても羨ましいと思いました。 小雪さんは、わざわざ門の前で待っていてくれました。しかも前に開けてはいなかった、重そうな門が開いていたので、私は驚いてしまいました。女性にこんな重そうな門を開けさせてしまうなんて、私は男失格です!! ……私は車から降りて運転手さんに『どうもありがとうございます。帰りは明日連絡します』と伝えて私の自宅へ行かせました。 「叶さん、いらっしゃい」 小雪さん似の杉原先輩の顔が重なって見えてしまい、私酷い……泣きそうな顔になっているに違いありませんでした。 「あらあら、叶さん」 小雪さんは私を幼い子供をあやすように抱き締めてくれました。 それがとても優しくて、私の目から大量の雨粒が溢れてきました。 「ふぇっ……こっゆきさっ……ん」 「もう大丈夫よ。いらっしゃい、叶さん」 『おいで、叶』 私が欲しかった言葉に私は更に雨粒を流しました。

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